2010年7月 審査委員長特別賞作品
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テーマ短編「LaQ大好き」
5歳の長男がLaQに夢中で、LaQ大百科に掲載されている「幻のクリアパーツ」を熱望していました。 LaQ芸術祭に応募させてみようかとHPを確認した際に、応募対象がLaQの作品だけではないことに気付き、母親である私が短編を書くことを思いつきました。 作品のモデルは長男と次男で、実話に近いです。たった一つでも、好きなこと・得意なことを見つけることが、子供にとって、どれだけ大きな意味を持つのか、ヨシリツさんへの感謝の気持ちを込めて書きました。 /【本編】「LaQ大好き」 うきょうくんは、4歳。保育園の年中さんクラスです。 うきょうくんは、朝、ママとバイバイするのがとっても辛いのです。 なぜって、ママとバイバイした後、すぐに遊んでくれるお友達を見つけるのが大変なのものですから。 鬼ごっこをしているお友達に「入れて!」と言ったら、すぐ「いいよ!」と言ってもらえる日もあります。 そんな日は朝からいい気分。・・・でも、そんな日ばかりではありません。 「入れて!」と言っても、「ダメ!」って言われちゃう日あるし、「ボールで遊ぶ子この指とまれ!」と指を立てても、だーれも指にとまってくれない日も、あるのです。 そんな日は、ぼんやり園庭に立っているうきょうくん。ママに会いたいな〜とちょっぴり涙が出てきます。 それと、うきょうくんは、生まれつき右手の親指が曲がっていて、パーをしたとき、手が完全に開かないのです。お友達に「うきょうくんの手、どうしたの?」と言われると、何だか恥ずかしくて、ソーッと手を後ろに隠すのでした。 そんなうきょうくんには、憧れのおもちゃがありました。 年長さんクラスに置いてある「LaQ(ラキュー)」です。 LaQは、四角や三角のパーツをつなげて遊ぶのですが、つなげるときにパチンパチンと音がして、汽車や車をつくることができるのです。 ママのお迎えが遅くなる日は、年長さんクラスに移動してママを待つので、LaQで遊べるのが嬉しくてたまりません。 ある日、ママと大きな本屋さんに行くと、あのLaQがたくさん置いてあるではありませんか! 「ママ、これが保育園にあるLaQだよ。ぼく、LaQ欲しいな」 うきょうくんが、ずっとLaQに憧れていたことを知っていたママは、LaQのセットを買ってくれました。 その日から、うきょうくんは、毎日毎日LaQに挑戦しました。 最初は、作り方の本を読んでもよくわからなかったけれど、だんだん上手になってきました。 ちょっぴり悲しかったのは、パーツの数が足りなくて、前に作った作品を壊さないと、新しい作品を作れないことです。でも、ママにお願いして、少しずつパーツを買い足してもらうと、大きな汽車を二台並べることもできるようになりました。 LaQの箱には5歳からって書いてあったけど、うきょうくんはまだ4歳。 「ぼく、4歳なのにLaQができるんだよ」と、少し得意そうなうきょうくんです。 「でも、うきょうくんて、色の組み合わせを考えてないよね。めちゃくちゃな色で作ってるね。カラーも考えてみたらどう?」とママは言います。 「いいんだい!カラーなんか。めちゃくちゃな色でいい。」うきょうくんは、ママの言うことを聞こうとしません。 だって、はやくはやく、作りたいのです。ドンドンドンドン作りたいのです。色の組み合わせなんて考えてたら、できあがるのが遅くなってしまいます。 でも、ある時、「ママが手伝ってあげるから、見本のとおりのカラーで作ってみてごらん」とママに言われたのです。ママと一緒にLaQができるのが嬉しくて、「うん!」と返事をしたうきょうくん。見本どおりの色の組み合わせでできあがった汽車は、とっても素敵でした。 「やっぱりカラーを考えると、きれいだね」と嬉しそうなうきょうくん。 その後も、やっぱり早く完成させたくて、めちゃくちゃな色で作ってしまうことも多かったけど、時々は色の組み合わせを考えて作るようになりました。 そして、「ちょっと面倒だし、時間もかかるけど、カラーを考えた方が、かっこいいな」って心の中で思いました。 年中さんクラスのときは、おうちで毎日LaQをしていたうきょうくん。 とうとう保育園の年長さんクラスになりました。年長さんクラスになると、教室にLaQがあります。クラスのみんなと一緒にLaQで遊べるのです! そのうちに「うきょうくんて、LaQが上手だね」「ここ、本を見てもわからないんだけど、どうやって作るの?」と、LaQで遊ぶときは、お友達がうきょうくんを頼ってくれるようになりました。 もちろん、うきょうくんは、みんなに親切に教えてあげます。 年中さんのときは、鬼ごっこに入れてもらえなくてウロウロしていた朝もあったけど、今は、そんな日は教室に戻って、LaQをします。 パチンパチンとLaQをしていると、何だか心が落ち着くのです。だんだん作品ができてくると、ママとお別れしたときの寂しい気持ちも消えていきます。 保育園の先生にも「うきょうくんは、集中力がありますね」って褒めてもらえました。 そんなうきょうくんの周りにお友達がだんだん集まってきて、みんなで一緒に大きなサメやメリーゴーランドを作ったり、わからないところを相談したり・・・「保育園て楽しいな」うきょうくんは、思いました。 「手が変だね」ってお友達に言われたことも、全然気にならなくなったのです。 うきょうくんの弟のさきょうくんも年少さんクラスになり、ママのお迎えが遅い日は、お兄ちゃんの教室に行って、パチンパチンとLaQをするようになりました。 「さきょうくんも、すごく上手になったんだよ」ママがお迎えに来たとき、うきょうくんは、さきょうくんが作った車を得意そうにママに見せました。 さきょうくんも、お兄ちゃんに褒めてもらって、とっても嬉しそうです。 夜、ベッドに入ってママにおやすみを言うとき、うきょうくんは言いました。 「ボク、LaQが得意で良かったな。得意なことがあると、強い気持ちになれるもん。みんなも、うきょうくんが一番LaQが上手だねってみとめてくれてるんだよ。そして・・ボク・・大きくなったらLaQハカセになるんだ・・・おやすみなさい・・」 完
- 名前Y.H
- 年齢40歳
- 住所愛知県
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心あたたまる文芸作品じゃ!是非 未来のLaQ博士になって欲しいのじゃ!